資金調達と資金繰りについて

融資の知識
○融資の基礎知識
 資金調達とひと口にいった場合、誰もが想像するのが借金(借入金)ではない
でしょうか?
 資金調達とは、資金をどこかから手に入れることで、誰かからお金を借りて
くるという方法は資金調達の最も基本的でポピュラーな手段であるといえます。
 しかし、この借入金という方法は手っ取り早く資金を調達する手段ではあります
が、借りたお金は必ず返済しなければならないし、返済するお金のほうが、利息を
上乗せされるため多くなります。
 この当たり前の常識をまずは、意識することが大切になります。

金融機関の知識
○金融機関の種類と特徴
 金融機関には、政府系金融機関と民間金融機関の2種類に大別されます。
 まず、政府系金融機関ですが、こちらは中小企業の保護であるとか、ベンチャー
企業の育成などといった特定の政策的な目的を掲げています。営利を目的として
いないため、そのような趣旨にかなう案件であれば、民間金融機関が相手にして
くれないような新規開業のようなケースでも融資に応じてくれ、金利面でも優遇
される場合があります。
 しかしながら、「お役所仕事」という性質は否めず、サービスがあまりよくなかった
り、手続きが煩雑であったりというデメリットもあります。代表的なものに「国民生活
金融公庫」「中小企業金融公庫」などがあります。
 なお、国民生活金融公庫と中小企業金融公庫は2008年10月に「日本政策金融
公庫」として統合・民営化されます。また、商工組合中央金庫も2008年10月に
完全民営化して新体制への移行が決定しています。

 次に民間の金融機関には銀行業を営む「都市銀行」「地方銀行」「信用金庫」
「信用組合」や信託業務を中心に行う「信託銀行」があります。
 銀行は、融資取引以外にも、預金取引や為替取引など事業を営む上で基本と
なるお金の取引の一切を任せることができます。
 まず、都市銀行ですが、日本全国および海外主要都市に店舗を有し、大企業を
相手とした取引を中心とし、現在は、「みずほ銀行」「みずほコーポレート銀行」
「三井住友銀行」「三菱東京UFJ銀行」「りそな銀行」(平成19年12月5日現在)の
5行に統合され、多様なサービスが用意されています。

 地方銀行は、一都道府県内の各地域を中心に店舗を有しており、地元の大企業や
中小企業、零細企業などを相手とした取引が中心にされています。サービスも
豊富で、とくに地方公共団体との結びつきが深いのが特徴です。
 信用金庫は、一都道府県内の一定地域を中心に店舗を有し、地元の中小企業
や零細企業を相手とした取引を行っています。地元企業の育成に熱心なため、
中小企業や零細企業にも対応してくれます。預金取引は誰でもできますが、融資を
受けるためには会員にならなければなりません。また、比較的規模が小さいために、
サービスは豊富ではありませんが、なかには地方銀行をしのぐ大規模な信用金庫も
あります。

 信用組合は、一都道府県内の一定地域に店舗を有し、会員となっている地元の
中小企業や零細企業を相手として取引を行います。預金取引も融資取引も会員
のみに限定されていますが、地域密着型のサービスを行っていて、小規模事業者
への融資にも応じやすいという特徴をもっています。

 これに対して「ノンバンク」と呼ばれる預金の受け入れはせずに、融資・リース
などの金融業務のみを行う金融機関があります。ノンバンクには「商工ローン」
「ビジネスローンの専門金融会社」「信販会社」「消費者金融会社」「リース会社」
「クレジット会社」が含まれます。
商工ローンなどは融資審査が甘い代わりに、金利が非常に高くなっており、
取り立てが厳しいといったことが問題とされたケースもあります。

融資の種類と特徴
○証書貸付
 証書貸付とは、一般的に略して「証貸(しょうがし)」と呼ばれていますが、「金銭
消費貸借契約証書」という証書に基づいて、融資を行う仕組みのものです。
契約書の中には、借入金額、資金使途、借入期間。返済方法、利率などが記載
され、それに、借主と連帯保証人の署名と実印を押印後、銀行にその契約証書を
差し入れて、実行される融資形態となります。期間が、1年以上の長期間の融資
(一部には1年未満の短期証貸というものもありますが)に利用されます。

 返済方法として主に「元金均等返済」「元利金均等返済」というものが選択でき
ますが、会社の事業資金であれば「元金均等返済」が一般的になります。
 元金均等返済は、毎回の返済期限における元本返済額を一定とし、それに利息を
上乗せして支払う弁済方法です。
 また、住宅ローンなどローンについては、「元利金均等返済」が一般的になります。
 元利金均等返済は、毎回の返済期間における元本返済額と利息を加えた金額を
一定額として返済していく弁済方法です。
 証書貸付は、長期の返済となるため、銀行にとってはリスクが高く、審査はそれだけ
厳しくなります。

○手形貸付
 手形貸付は、一般的に略して「手貸(てがし)」と呼ばれていますが、会社が
自社で振り出した「借入用の手形(手形自体は銀行のものを使用します。)」を、
銀行に差し入れて融資を行う仕組みのものです。基本的に手形の性質上、
元本の返済は、手形期日に一括して行われることになりますので、利息は貸出の
際に一括して前払いすることとされています。
その利息や印紙代を差し引いた残高のみを指定口座に入金することになります。

 この手貸は、主に短期の融資に利用されますが、稟議により期日の都度、新しい
手形を差し入れることで、実質的に借入期間を延長するケースも多く見られます。
 手貸には、通常の運転資金の範囲内で、枠というものを設定することができます。
手形貸付枠(手貸枠)といいます。これはのちに述べる「当座貸越」のようなもので、
一定の極度額の範囲内で、反復して融資を行う仕組みのものです。

 このメリットとして、銀行としては、その都度その都度、稟議を作成する必要がなく
1年に1回、手貸枠の更新稟議だけで、非常に簡便性が高いことです。事業主に
とっては、反復していつでも利用できるところです。
 デメリットとしては、会社の業績が順調な先でないと、なかなか稟議が決裁に
ならないところです。
 資金繰りをちゃんと行っている企業でなければ難しい案件になります。

○商業手形割引
 商業手形割引は、一般的に略して「商手(しょうて)あるいは、割引(わりびき)」と
呼ばれていますが、会社が商取引で保有する受取手形を担保として、銀行に差し
入れ、その手形金額と同額の融資を受ける方法です。形式的には、手形を銀行に
買い取ってもらうような
形となりますが、あくまで融資であることに変わりはありませんので、通常の審査が
行われます。
 手形の割引を申し込み、決裁になり実行されると融資金額が指定口座に振り込ま
れます。
そのときの金額は、利息を前払いで控除された金額となります。
 返済は手形の決済(買い取った手形の取立)によって自動的に行われますが、
その手形が不渡りとなれば、ただちに手形の買戻しを求められます。
 この割引についても手貸と同じように枠を設定することが出来ます。これを商業
手形枠(商手枠)といいます。基本的に手貸枠と考え方は同じです。
 割引も先ほど述べた通り、融資の審査があるので、融資先自体の信用度が低け
ればすべての保有している手形を割引きできるわけではなく「銘柄限定」といって
、ある決まった振出先の手形しか割引くことができなくなる場合もあります。

○当座貸越
 当座貸越には、2つの方法があります。「専用当座貸越」と「一般当座貸越」で、
その違いは、当座預金に連動するかどうかにあります。
 まず、「専用当座貸越」ですが、これは一般的に「専用当貸(せんようとうがし)」
と呼ばれています。
専用当貸は、当座預金に連動しないため、当座預金の口座がなくても極度額を
設定し、融資を受けることができます。
 一方、「一般当座貸越」ですが、これは「一般当貸(いっぱんとうがし)」と呼ばれ、
当座預金を開設している企業に対して、一時的な資金不足によって手形や小切手の
不渡りを発生させないように、あらかじめ定めた一定の極度額の範囲で融資を行う
仕組みです。
 事前に銀行との間で当座貸越契約を結んでおけば、資金不足発生の都度、
自動的に融資が実行されて、手形や小切手の決済が行われます。
 決まった返済日がなく、借りっぱなしの状態が続くため、銀行融資の中で最も
審査が厳しい融資方法です。そのため、一般的にはよほど優良企業かつ不動産
などの担保がなければ受けることは難しいです。

○どの融資が受けやすいのか
 このように銀行融資にはさまざまな形態がありますが、どの方法が一番融資を
受けやすいかという点については、資金使途、返済計画、会社の業況、信用度
などによって変わりますが、あえて順番付けするのであれば審査の通りやすさから
@割引、A手貸、B証貸、C当貸の順番になります。

 まず、割引ですが、手形自体が担保となり、支払期日が到来したら銀行は、手形の
支払人に取り立てることによって回収ができるため、銀行としては審査を通しやすい
のです。
 次の手貸については、1年以内(通常3ヶ月〜6ヶ月)の短期間の融資となるので、
銀行としては貸倒れの確率が少なくなるため、長期(1年以上)の証貸についてよりも、
審査を通しやすいものです。
 当貸については、契約している間は、極度額内で借りっぱなしの状態も出来る
ため、もし企業の業績が悪くなって返済不能となっても、回収することが出来なくなり、
リスクが高くなるため、銀行は当座貸越については審査を最も厳しくします。
 このように、それぞれの融資方法をうまく使い分けるには、それぞれの特徴を把握
して融資を申し込むことが重要になってきます。

信用保証協会・公的融資
○信用保証協会とは
 信用保証協会とは、「信用保証協会法」に基づき、担保力を持たない中小企業の
資金調達を助けるために、銀行からの借入金の連帯保証人となり、金融の円滑化を
図ることを目的として設立された公的機関です。全国47都道府県の各地域に必ず
1つ以上設置されています。

 信用保証協会の保証を受けると、一定の保証料を支払わなければならないのですが、
銀行は、非常に高い保全とみなしますので、どの銀行でも信用保証協会の保証付融資
には応じてくれます。

 なぜなら、融資先企業が倒産という事態に陥っても、信用保証協会が代わって
債務の履行します。(これを代位(だいい)弁済(べんさい)といいます。通常は業界
用語で代弁(だいべん)といいます。)このことにより、銀行のリスクがなくなり、安心
して融資を実行することが可能となるからです。

 ただし、今までの信用保証協会保証付き融資は、借入金額に対して、信用保証
協会が原則として100%保証していました。が、平成19年10月1日保証申し込み
受付分からは「責任共有制度」というものが導入され、制度の導入により保証付き
融資は、一部の保証を除いて80%保証となりました。

 信用保証協会の保証には、「制度融資」に対する保証と「一般融資」対する保証が
あります。
「制度融資」というのは、公的融資として、国や県、市が定型の融資制度を設定し、
その制度融資に信用保証協会の保証を付けて行われるものです。
 この制度融資は、固定金利でかつ金利が低く、返済計画と金利負担が立てやすい
などがメリットとなります。
 「一般融資」とは制度融資以外のもので、単に銀行の融資に信用保証協会の
保証を付けるというものです。金利などは、銀行独自の定めによります。

 信用保証協会を利用する場合には、まず銀行に相談して、銀行経由で保証を
申し込むことが一般的ですが、各都道府県の各地域に設置されている信用保証
協会の窓口を直接訪ねて、事前に保証を依頼するケースもあります。「制度融資」の
場合は、先に述べた通り、国や県、市が定型の制度融資を設定するため商工会議所
などに直接申し込むことになります。

 保証条件としては、営業開始後6ヶ月が経過していることや税金を滞納してない
ことなどいくつかあるので、どんな会社でも保証に応じてくれるというわけではあり
ません。条件については、変更されることがありますので詳細は、各地域の信用
保証協会や銀行、または専門家に問い合わせしたり、ホームページで調べると
よいでしょう。
 保証を受けるにももちろん審査を受けなければならず、業績が悪いなどの理由が
あれば、保証金額の減額や保証自体を断られるケースもあります。

○公的融資とは
 中小企業の資金調達は、大企業が資金調達するときのように簡単ではありません。
特に、開業準備資金の調達や、開業して間もない企業の資金調達は、民間金融
機関ではかなり厳しいものがあります。また、小規模零細企業なども民間金融機関は
十分な融資を行ってくれないことがあります。
 そこで、十分な借入を行うことができない中小・零細企業に対して、資金調達の
便宜を図るものが「公的融資」です。

 公的融資は、中小企業の資金調達を助けることを目的に設立された公的な金融
機関である「国民生活金融公庫」や「中小企業金融公庫」などの政府系金融機関に
直接申し込みを行います。
 次に、信用保証協会でも紹介したように、国や県、市が定型の制度融資を設定
する地方公共団体の制度融資も公的融資の1つです。また、中小企業の経営活動を
サポートする活動を行っている各種事業団もさまざまな融資制度を設けています。
 公的融資のメリットとして開業時や実績の乏しい零細企業、個人事業、赤字企業
などの中小企業でも融資を受けることができ、貸し渋りもないことや、担保や保証人を
必要としない借入も可能です。
 また、長期資金を固定金利で借入れすることができ、全般的に低金利(無利息の
ものもあります)であることです。

 ただし、デメリットとして、政府系金融機関は支店が少なく、1つの支店でたくさんの
企業を受け持つため、なかなかそれぞれの企業に親身になって、対応することが
難しいことがあります。
また、書類の作成など煩雑な面もあります。
 さらに、業種もパチンコ店、キャバレー、バー、ゲームセンターなどの娯楽業種や
金融業、不動産業(土地売買)など不適格業種は取引ができないことがあります。

○信用保証協会・公的融資の活用
 まず、新しく事業を始めるときには、事務所や店舗の家賃やそれらの内装費用、
オフィス機器、広告宣伝費、仕入代など運転資金や設備資金と呼ばれる費用が
必要になります。
 このように、新規開業には大きな資金需要があるにもかかわらず、民間金融機関
からの資金調達は、かなり厳しいものがあります。民間金融機関は、新規開業の
場合は、その会社に実績と呼べるものはなく、事業計画も絵に描いた餅という扱いに
受け止め、審査のやりようがないと判断しがちです。
 そこで、創業前や創業して1期もたっていない場合は、国民生活金融公庫か地方
公共団体の創業者向け制度融資を利用するのが常套手段です。
 ここで注意すべきことは、必ず経営計画書などが必要となってきます。融資を受け
られるかどうかはいかに説得力のあるか経営計画書などを作成できるかにかかって
きます。

 もう1つの注意点は、いかに自己資金を確保しているかです。金融機関の見方
としては、自己資金のおおよそ2倍程度まで融資するというのが一般的です。
 次に、創業から6ヶ月から1年を経過した場合には、国民生活金融公庫や制度
融資に加えて、信用保証協会の一般保証付融資を利用すればよいのです。

 その後は、財務内容を良くしていき、返済実績をある程度つけてくると、プロパー
融資を受けることも可能になり、資金調達の幅が格段に拡がります。
 プロパー融資は、通常、銀行内で「プロパー」と呼ばれ、信用保証協会の保証が
付かない融資のことを指します。そのため、焦げ付いた債権は銀行がすべて保証し
リスクが高くなるため、銀行はこのプロパーの審査には神経を尖らせることになるのです。

融資の受け方
○銀行とうまく付き合う方法
 銀行から融資を受けるためには、日頃から融資以外の取引を通じて、信用を
得ておく必要があります。
 銀行にとって取引先とは、すでに融資取引のある顧客を指します。そして、銀行
から見た場合のよい付き合いとは、当たり前ですが、貸したお金を約束どおり
順調に返済して、業績を順調に伸ばしていくことです。
 ところが、いきなり最初から融資取引ができるわけではありませんので、他の
取引を通じ、少しでも信用を勝ち取らなければなりません。

 まず、預金口座をつくり、売上入金や仕入代金などの振込み、あるいは国民
生活金融公庫などの公的資金の引き落とし口座としての利用などにより、口座を
動かし、銀行側にアピールすることになります。売上入金や振込み、手形取立、
口座振替など預金口座を日頃から動かしておくことは、銀行との関係を深める
ためにはとても有効となります。
 もっとも、会社名義の預金口座を開設した場合には、「新規法人口座開設通知」
なる内部資料が本部から送付され、営業課長から担当地区の営業マンに渡されます。
その後、その営業マンがあいさつに来ることがあり、それをきっかけに銀行からの
営業マンが出入りするようにればしめたものです。

○銀行の基本的な融資判断
 銀行は、貸したお金は必ず返してもらわなければならないため、融資先をさまざまな
角度から診断することになります。銀行の融資判断における考え方は、おおまかに
いえば、次のような5つとなります。

@知らない人にはお金を貸さない
 例えば、皆さんは自分のところに全く見ず知らずの人が、「お金が足りない
ので、50,000円貸してください」と突然言われたらどうでしょうか?
ほとんどの方は、貸したくないと思うのが当然ではないでしょうか。誰でも、
見ず知らずの人ではなく、今までの付き合い方などを通じて、相手を信用
できると判断すれば、お金を貸してもいいと考えるのではないでしょうか。
 「銀行とうまく付き合う方法」で述べたとおり、まずは、取引銀行に預金口座を
開設して、会社のお金の流れを知らせることが最低条件となります。

A儲かっている人にお金を貸す
 借りたお金を返済していくには、事業によってお金を生み出さなければ
なりません。
そうすると、お金を生み出す生産力が弱ければ、それだけ返せなくなる
危険性が高いことになります。
 そこで、銀行は、このお金の生産力を見極めるため、過去の「決算書」や
「実績・予定資金繰り表」の提出を求め、その会社が儲かっているか、そうで
ないか、判断するのです。

 中小企業では、節税主義により、税金を安くしたいがために、利益を
少なくとしようする傾向がありますが、そのような決算書は、借入れを
考えた場合、不利になってしまいます。ただ、“節税する”という判断と、
“銀行からの借入れをスムーズに行えるようにする”という発想は方向性が
180度違うのです。
 そして、最近では状況にもよりますが、直近の決算で赤字となっている
企業が、お金を借りることが、かなり困難なこととなっています。

B万が一のときの備えが必要
 銀行の立場で考えれば、会社に万が一のことがあって返済がストップして
しまった場合でも、貸したお金を回収しなければなりません。そこで、保全
(ほぜん)といって、そのような場合の備えが必要となってきます。この保全
には、保証人という人的担保や、不動産・有価証券・預金などの、物的担保
というものがあります。
 保証人や不動産担保などの徴求は、融資先が倒れたときの資金回収の
ために不可欠なのです。保証人もいない、不動産もないという人には、怖くて
お金を貸せないのです。

C誠実な人にお金を貸す
 これは、誰もが思うことでしょうが、銀行もやはり、誠実な方と付き合いを
したいと考えています。儲かってないのに儲かっていると見栄を張ってみたり、
本当は、日々のやりくりに困ってお金を借りたいのに、業績拡大に伴ってお金を
借りたいといってみたり、銀行からお金を貸してもらいたいばかりに、うそをつく
ことは少なくありません。とにかく、誠実に人と接することが大切だと思います。

D銀行も利益を出さなければならない
 やはり、銀行も一般の企業と同じく、利益を出さなければなりません。銀行が
お金を貸すのは、利息収入を稼ぐという商売のためです。商売である以上、
銀行としても、得をしたい、儲けたいと考えています。すると、銀行にとって
旨みのない会社は、相手にしてもらいにくいということになります。銀行も儲け
させてくれる企業と、付き合いたいと考えているのです。

融資審査のポイント
○融資審査は決算書ありき
 「決算書」は過去の経営実績を示していますが、融資審査において最も基本
となるものです。
 民間の金融機関であれ、政府系金融機関であれ、危険な会社やデタラメな
会社へは、お金を貸してくれません。そして、危険な会社を見分けるために、
金融機関はだいたい過去3期分の決算書を求め、次のような点を見ることに
なります。

@利益に偽りがないかを見る
 まず、何よりも、儲かっている会社かどうかです。儲かっているということは、
今現在、会社の事業がうまく回っていることを表していると考えられますので、
通常はまず、ここに注目するわけです。
 さて、利益がかなり上がっていれば、まずここでの問題はありません。
 注意しなければならないのは、ほんのわずかな利益の場合です。そこには、
“利益の操作”の疑いが、頭をよぎるからです。かろうじてでも利益が上がって
いるようにするためには、何らかの“粉飾”が行われていないかどうかという点です。

 粉飾の代表的なものに、売上高の水増しや、架空在庫の計上など、利益
操作の手法はいろいろあります。もちろん、通常、粉飾は巧妙に行われて
いますので、決算書をざっと見ただけでは、それに気づくというわけではあり
ません。
その可能性が気にかかるのです。 決算書が黒字になるか赤字になるかは、
よく言われる財務格付けの観点からは、天と地ほどの開きがあります。
したがって、銀行としては、とても慎重になるのです。

 逆に、本当に赤字になってしまった場合は、もちろん仕方ありませんが、
税金対策のために少額の赤字決算にしたりすることが、万が一あるとすれば、
銀行取引の観点からは自殺行為で、絶対に外してはならないポイントです。

A自己資本を見る
 「損益計算書」で利益の額を見た次には、「貸借対照表」で自己資本の部を見ます。
銀行の担当者によっては、利益の次に売上げを見る人がいるかもしれませんが、
何といってもこの自己資本です。
 会計学的な定義は別として、この自己資本は、これまでの利益の蓄積が
どれだけ行われているかを示していますので、これは多ければ多いほど良く、
経営も安定しているといえます。

 逆に、業歴が長いにもかかわらず、この額が極めて少ない場合は、注意が必要です。
さらには、自己資本の部分がマイナスとなる、債務超過という場合がありますが、
これは、「会社の資産よりも負債(借金)の額が多い」ということです。
 通常、このような場合銀行は、融資にかなり慎重になります。よく、銀行などと
話をしていて、「債務超過でさえなければ、融資については前向きに考えます」
などと言われるのは、このような場合です。

 もちろん、債務超過だからと言って、絶対に融資の対象にならないのかという
訳ではありません。例えば、ここ数年は利益が計上されている場合です。
それ以前のマイナスが多かったために、まだ、債務超過を脱するまでには
いたっていないとしても、会社の収益力はついてきたと言えます。利益さえ
上がっていれば、借金を返済する元手ができ、明らかに回復傾向が見られる
場合には、たとえ債務超過であっても、融資の対象として検討することは可能です。

B隠れた借入金がないかを見る
 次に目を通したいのが、借入金の額です。銀行はこの借入金の絶対額や
売上高などとの比率を重視しますが、支払利息とのバランスにも注意します。
 例えば、損益計算書に支払利息が100万円計上され、貸借対照表の借入金の
合計が1,000万円であるとすると、逆算するれば、年間10%もの金利を負担して
いることになります。この低金利の環境では、どう見ても不自然です。どこからか、
高い金利で調達をしているとしか考えられません。
 決算書の勘定科目明細書に書いてある金融機関からの借入金にも、それらしき
ものがないとすると“簿外”の可能性まで出てくるわけです。
 説明を簡単にするために、ここでは決算書に表れている借入金の残高を使用
すると言いましたが、通常は前期の残高と「足して2で割って平均残高を求める」
ことにより、より精度の高い算出を心がけます。

C「仮払金」など雑勘定を利用した不正がないかを見る
 実は、“雑勘定”などという勘定科目は会計学上では存在せず、補足的な
小さな勘定科目を総称したものです。この雑勘定こそ、銀行員と借入側の
認識の大きな違いが存在しているといえます。
 銀行の注目する雑勘定の代表的なものは「仮払金」でしょう。経営者の方は、
通常この「仮払金」という勘定をさほど気にしていないと思います。最終的な
処理が未確定な支払いを一時的に処理するものとして、多くの場合に利用され
ていると思います。

 ところが、銀行では、この仮払金という勘定科目は、まさに一時的・経過措置
的なもので、一日も早く本来の適切な科目で処理すべきものなのです。すこし
大げさな言い方になりましたが、それくらいの感覚を持っていると考えていいと
思います。外部からはわかりにくい部分です。
 そこで、もし取引先の決算書に、この仮払金という科目を見つけた場合には、
「何か不正が隠されているのではないか」と疑う習性がついていますから、
すぐにその中身を調べたくなります。
 この金額が大きくなればなおさらで、経営者の方にはこの点について、ちょっと
気に留めていただきたいと思います。

 金融庁が各金融機関に対して行う検査でも、融資先の貸借対照表(バランス
シート)の中で、この仮払金について徹底的に調査されます。もしこのような追求の
中で、その融資を行っている現場の支店長からきちんとした内容の説明を聞け
ない場合、「この銀行は、融資先の財務内容の突っ込んだ分析を行っていないな。
本当に大丈夫なのか?」という印象を検査官に持たれてしまいます。
 これでは、銀行にも、融資先のお客様にもプラスにはなりません。それを防ぐ
ためにも、この仮払金の内容については、きちんと説明ができるようにしておく
ことが必要です。特に金額が大きい場合には注意が必要です。

D決算書3期の時系列で不良資産を見破る
 決算書を分析する場合、一期間だけでは十分ではありません。その期が
特殊な期だったということもあり得るからです。
 たとえ特別な期でなくても、その会社の業績が順調な傾向にあるか、あるいは
低下傾向にあるかを見るためにも、複数の期間の業績を比較検討する必要が
あります。
このような目的から先ほど述べたとおり、銀行は通常、3期分の決算書を比較
検討します。

 3期分の数字の比較をすれば、例えば次のようなことがわかります。
 まず、売上の状況です。会社の業績を見る場合に、もちろんその年の売上高の
絶対額も重要な指標ではありますが、それよりも前年、前々年に比較して、売上が
増加傾向にあるのか、あるいは、減少傾向にあるのかをみることがとても大切です。
 また、増加傾向にある場合には、その“伸び率”にも注意したいところです。

いわゆる、会社の勢いというもので、同業他社との比較をすることも有効です。
 さらに、売上高単体ではなく、利益との関係についても注意する必要があります。
売上高は伸びているのに、利益は横ばいの場合、あるいは、むしろ利益が減少
している場合には、それはどのような理由によるものかを確認する必要があります。
 さらに、「隠された不良債権がないか」を見つけるためにも、決算書を2〜3期分
並べてみることは有効です。

 例えば、「受取手形」に2期連続して、同額かつ同一支払人のものがあれば、
これは不良資産ではないかと疑います。売掛金でも、同様のことがいえます。
 こうした事実がバレないように個別の明細を示さず「他○○件、○○百万円」
などとまとめて表示したりします。しかし、これも決算書を何期分か横に並べて
比較してみると、ある決算期から突然、このような一括表示が採り入れられたり
するので「何かおかしい」とさらに疑う結果になってしまいます。

○資金使途と返済計画を明確にする
 銀行から融資を受ける場合には、資金使途と返済計画をきちんと説明できることが
不可欠です。
資金使途とは、資金の使い道は何で、それが企業経営上なぜ必要か、ということです。
融資の申し込みをすると、この件については必ず聞かれます。
もし、融資申し込み時に銀行に伝えた資金の使い道と実際が異なることがわかって
しまえば、銀行との信頼関係は一気に崩れる可能性があります。
 企業が必要とする資金のなかには、「設備資金」と「運転資金」とに大別することが
できます。
 設備資金とは、新規に設備投資をするときに必要となる資金で、土地・建物、
機械装置、工具器具備品、車両などの購入に充てられるものです。設備資金の
場合は、資金使途の説明が比較的容易です。

 一方、運転資金とは、事業を営む上で日常的に必要になる資金で、仕入代金、
賞与、税金などの支払に充てられるものです。
 資金需要の種類として、経常運転資金や赤字補填資金、つなぎ資金、納税等
資金などがあります。
その中で、経常運転資金は、「売掛金+受取手形+棚卸資産−買掛金−支払
手形」という算式で求められます。しかし、この金額がそのまま、企業にとって
融資を受ける必要がある資金になるわけではなく、あくまで、企業が事業活動を
行っていくなかで、資金の需要が発生するその金額だと考えてください。
 そのようなことで、運転資金の資金使途の説明は、設備資金の資金使途の
説明の場合と比べて少し厄介かもしれません。
 ただし、資金使途のポイントとしては、設備資金であれ、運転資金であれ、前向きな
理由で借りるということです。前向きな理由とは、例えば、「受注の増加が見込まれて
いるので、新しい能率のよい機械設備を購入する」「商品の売上が伸びているので
仕入資金がほしい」「大口の得意先を開拓したので、増加運転資金が必要になった」
などの理由です。
 また、どうやって借入金を返済するかを明確に説明できるようにしなければなりません。
そのために必要となるのが「資金繰り表」です。かつては、担保さえあれば資金繰り
表を作らなくても融資を受けることができましたが、今日では、資金繰り表の作成は
必要不可欠です。

○赤字の場合の対処の方法
 まず、営業利益が赤字の場合、売上から原価を差し引いた売上総利益に対して
人件費や管理費が多すぎます。基本的に事業活動から生み出される利益が出て
いないということです。
儲からない仕事をしているという認識が必要です。
 原価を引き下げるとともに、人件費や管理費の抜本的な見直しと、一人ひとりの
生産性を上げていかなければなりません。数期間、手を尽くしたとしても営業赤字が
解消しなければ、事業閉鎖も考慮しなければなりません。
 資金繰り表の上では、月次ベースで資金不足がしばしば発生しますので即刻、
売上や利益構造、費用構造を見直します。

 銀行には、業務改善について、事業計画表などにより数値裏付けをもって、それを
全力で実行中であることを納得してもらわなければ、まず融資は困難であると考えた
ほうがいいです。
 次に、経常利益が赤字の場合ですが、営業利益は黒字で、経常利益が赤字の
場合は、営業利益そのものが過少であるか、営業外費用である支払利息・割引料が
営業利益に対して過大であることを表しています。営業利益の改善を図り、過大な
借入金の削減と金利の引き下げ交渉を行います。
 尚、営業利益や経常利益は黒字であって、最終利益が赤字の場合がありますが、
これは、資産の売却など一時的な損失が発生している場合(特別損失)です。
このような場合は、あくまで一過性のものであり、次期からは元の最終黒字に戻る
ことを数字で説明します。
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返済不能になった場合の対処法
○返済できなくなるケース
 資金が不足する原因というのは、前に述べたとおり6つの原因によると説明しました。
資金が不足しても、当然融資を受けている企業は、銀行に返済をしなければなりません。
返済する資金がない場合、これが不可能となってしまうことになります。
返済が出来なくなる場合は、次のようなことが企業で起こっています。
 借入れの返済額が返済財源(税引き後当期利益+減価償却費)を上まわると
資金は減少していきます。そのような状態では、減少した資金を埋め合わせる
ために融資を受ける必要があります。

 しかし、融資を申し込んでも審査が通らないとなると、企業として「返済財源>返済額」
という状態にならなければ、資金が底をついてしまうことになります。
 このように、融資が受けられないケースが、返済出来なくなる典型的なケースです。
 融資を多く受けている企業は当然、毎月の返済額も大きくなります。その返済額
以上の返済財源を出している企業は正直、それほど多くはありません。その場合、
何も対策を打たなければ、資金に行き詰まってしまいます。

 資金不足に陥った問題の解消を先送りしてはいけません。すぐに対策をとる
必要があります。
そうならないための有効策が、次に述べる「リスケジュール」です。

○リスケジュールとは
 「リスケジュール」という言葉を聞かれたこともあるかもしれませんが、そもそも
リスケジュールとは何のことでしょうか?
 支払いの中でも、特に負担感の重い支払は、銀行への融資返済額です。
以前の資金調達の結果、その返済負担が残ったわけですが、お金が減っていく
ような印象は拭い去ることができません。
「もし、この支払がなければ・・・」と頭を痛めることも少なくないことでしょう。もし、
仮にこのような借入金の返済負担を軽減できるのであれば、それによって資金
繰りはどんなに楽になるでしょう。
 つまり、借入金の返済スケジュールを変更して、毎月の支払負担を減らす方法、
あるいは、一定期間返済を猶予してもらう方法、これこそを「リスケジュール」という
のです。通常は省略して「リスケ」と呼ばれています。

○リスケジュールのメリット・デメリット
 まず、メリットですが、リスケジュールをすることによって、毎月の資金繰りが
とても楽になることです。それと同時に、決断により簡単にすぐ実行できる手段
であることも大きなメリットです。
 返済財源を大きくするために利益を大きくすることはすぐにはできず、時間がかかります。
 しかし、リスケジュールは融資の条件変更ですので、銀行にお願いし、承諾して
もらえればすぐに、資金繰りは改善することができます。
 一方、デメリットとしてこの「リスケジュール」は、業績が悪化して実質的に支払
不能の状態に陥った企業が、銀行と交渉することによって返済計画を見直すもの
ですから、正常先とは認められず、リスケジュールを行っている間は、融資が受け
られないということです。
 しかしながら、倒産してしまえば、元も子もないわけですから、背に腹は変えられません。
デメリットよりもメリットの方が断然大きいと思われます。
 考えてみれば、リスケジュールは、銀行から融資が受けられないときに行うもの
なので、そこで銀行から融資が受けられなくとも同じこととなります。

○リスケジュールに必要な書類
 まず、銀行にリスケジュールの話をするのは、資金不足に陥って返済できそうも
ないと思われる返済日の数週間前に行ったほうが無難です。もちろん、出来るだけ
早く銀行に出向いたほうがいいです。
 あとで、リスケジュールについてどのような資料を用意すればよいか述べますが、
その書類の準備が出来ていなくても、銀行に経営者自らが「次回の返済日の返済は
資金が不足し、難しそうです。

 今後、どうやって会社を再建していくか、社内で現在検討しています。早急に書類を
準備して、ご説明に参ります。」というように、銀行に誠意を見せておくことが重要です。
 とにかく、「今現在は返済できませんが、返済を減額あるいは猶予している間に
利益体質をつくり、将来は必ず通常の返済が出来るようにするので、今は返済を
減額あるいは止めて見守ってほしいです。」と誠心誠意交渉に臨むところから
はじまります。

 リスケジュール交渉のためにまず以下の書類を用意します。
@貸出条件変更申込書(書式は任意です)
 現在の返済条件をどのように変更してほしいのか、また、変更の理由などを
記載し、書面にて意思表示をします。

A経営改善計画書(書式は任意です)
 リスケジュールを銀行が承諾するためには「現在は、業況が厳しい状況に
ありますが、リスケジュールによって資金繰りをラクにすれば、その間に、
業績向上に力を注ぎ通常の返済が可能になります」ということを向う3年間
ぐらいの計画を数値で表現するものです。
したがって、どうやって売上をあげていくのか、どうやって経費を削減していく
のかなど、対策、根拠を具体的に数値に表し説明します。

B資金繰り表
 リスケジュールを行わなかった場合の現状の資金繰りと、行った場合の
資金繰り予想を2年分ぐらい作成します。当然、リスケジュールを行うことに
よって資金不足が解消できますという予想にします。
その他、直近の決算書、あるいは試算表などを用意します。

○リスケジュールの進め方
 リスケジュール交渉は、ほとんどの経営者にとって、はじめての経験だと思います。
そのため「恐怖心」やあるいは「引け目」を感じ、経営者としてはできれば行きたく
ないと思うかもしれません。
 しかし、銀行としては、数多くの中小企業の経営者からリスケジュールの依頼を
受けており、基本的に「またか」という感覚で受け止めます。数多くある同様の交渉の
1つでしかないので、あまり気張らずにリスケジュール交渉にのぞんでほしいものです。

 銀行に対して、リスケジュールの希望を伝えると当然、拒否反応を示しその
希望は間違いなく断られます。その段階で、大抵の経営者は萎縮してしまいますが、
ここであきらめてはいけないのです。
銀行内部の取り決めでそういうことになっており「まずは返済を」という姿勢を見せる
必要があるのです。

そこから、リスケジュール交渉がはじまります。銀行に対し誠心誠意、条件変更に
ついて説明すれば必ずリスケジュールに応諾してくれるはずです。銀行内部で稟議書を
作成し、決裁をもらう手続きを踏んだ後でなければリスケジュールの応諾はできない
ので、1〜2ヶ月、あるいは、もっと長引くこともあります。
 しかし、これは交渉ごとであり、決してあきらめてはいけないのです。

資金繰りの意味
○資金繰りとは何か?
 会社が事業を営む上で定期的に支払わなければならない出費があります。
例えば、毎月支払う仕入代金、人件費、水道光熱費などの諸経費です。その他、
年に数回支払う、賞与や税金などもあり、これらは決められた日までにキチンと
支払う必要があります。
 それらの支払資金は、通常、売上代金よりまかなわれますが、売上は景気の
動向とか、季節的要因、経営努力の如何などによって変動します。また、得意先の
都合により、すぐに代金を支払ってもらえるとは限りません。そのため資金が不足
することもありますし、時には余ることもあります。

 支払の前に入金があればよいのですが、得意先の事情により支払日より後に
入金されることもあり、この場合には資金が不足します。また、設備投資をする時にも
資金は不足します。
 このように、通常は会社の資金はいつも一定額を保てるわけではなく、さまざまな
理由から過不足が生じます。資金が不足すると支払が出来なくなりますから、資金が
ショートしないように、資金の入りと出のバランスを図る手続きが必要なのです。もし、
資金がどうしても不足するようだったら資金を調達し、資金が余ったら運用します。
 これが資金繰りです。

○「利益」と「収支」の違い
 決算時に利益が出たので税金を支払わなければならないが、その払う資金が
手元にないということを経験した経営者も少なくないはずです。「黒字なのにお金が
ない」いわゆる「勘定あって銭足らず」という状態です。
 これは、「利益」と「資金」が一致していないことから起こります。資金繰りを円滑に
進めるためには両者の違いをよく理解しておくことが大切です。
 尚、ここで資金とは現金資金のことをいい、現金、普通預金、当座預金、通知預金
など自由に引き出して支払に充てることができるものをいいます。
 利益は、企業会計のルールにしたがって計算された数字で実際の資金収支とは
異なります。
 利益は、損益計算書で売上高から売上原価や販売費及び一般管理費を差し引いて
計算されます。
 ここで売上高というのは一事業年度にどれだけ売ったかを示すもので資金を回収
しているかどうかを問いません。つまり、「現金主義」ではなく「発生主義」によって
計算されるものです。
 利益を出しながら倒産してしまう黒字倒産も利益と資金が一致しないために起こる
現象なのです。
利益が出ても資金繰りが悪いと会社はつぶれてしまいます。
 逆を言えば、赤字会社でも資金繰りがつけば倒産を防げることができるのです。
 会社の生死は「資金繰り」で決まります。

資金繰りの必要性
○なぜ、資金繰りが必要なのか?
 赤字経営でも資金繰りさえつけば倒産は防げると先に述べましたが、資金繰り
さえもつかなければ支払が滞り最終的には「不渡り」を出してしまいます。
 赤字経営が続けば、銀行からの調達が難しくなり、その結果、資金不足が生じ
倒産という事態になります。
 会社の倒産は資金の調達が出来なかったこと、つまり資金繰りの失敗に直接の
原因があります。
 倒産は単に会社の終わりにすぎませんが経営者や会社関係者にとっては悲劇の
始まりです。
債権者には連鎖倒産の危機が迫り、従業員は職を失うことになります。そして、
最大の悲劇は、経営者とその家族に訪れるのです。
 だからこそ、日頃から経営者が財務や資金繰りについてしっかりと意識をもち、
資金繰り表や試算表などを毎月作成して対策を打っておくことが必要になってくるのです。
○資金繰りは経営者の最も大切な仕事の1つ
 先に述べたように、資金繰りがなぜ必要なのか?その理由のひとつは、「利益」
と「資金」が一致しないためです。従って、会社は資金繰りの状況を把握しなければ
なりません。
もうひとつの理由、これが根本的な理由なのですが、資金繰りをすることによって
資金ショートを防ぎ、関係者に迷惑をかけたり、不渡りを出さないようにするためです。
資金繰りがつかなければ、仕入や経費などの事業を営んでいく必要な代金が
支払えなくなり、さらに給料が支払えなくなっていきます。
 このような様々の支払いが滞ると、会社の内外の関係者に迷惑がかかり、会社の
信用も当然低下していきます。
 そして、最後には不渡りを出して倒産に追い込まれます。

 逆に資金繰りがうまくいけば、経営は安定し設備投資などを行って会社を大きく
成長させることも可能です。したがって、資金繰りは経営者の最も大切な仕事の
ひとつであることを再確認してください。
 よく、会社の資金の流れは、人間の血液の流れにたとえられますが、血液の
流れが滞ると病気になり、最後は死に至ります。それと同じように、会社の資金の
流れが滞るとさまざまな問題が発生し、最後には倒産に至ります。資金繰りは
倒産を防ぐための最大の健康管理であるのです。
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資金繰り改善方法
○資金が不足する原因は?
 まずは、資金繰りを改善するには、資金が不足する原因をつきとめることが大切です。
 会社の資金は、余ることもあれば不足することもありますが、一般的に中小
企業では不足することがほとんどだと思います。もともと、自己資金が少ないとか、
放漫経営による失敗をしたなどの特別の場合を除いては、通常次の6つの原因に
より、資金繰りが苦しくなります。

@売上債権の増加
 売上げが変化しなくても、売掛金や受取手形の残高が増加すれば、
現金の回収がなされていないので資金は不足します。
A仕入債務の減少
 仕入高が変化しなくても買掛金や支払手形の残高が減少したとき、
それだけ現金で支払いをすれば資金は不足します。
B経費の浪費
 利益は売上げから経費を差し引いて計算します。したがって売上げが
減少したり、経費が増加すれば利益が減少し資金は不足します。
C在庫の増加
 在庫が増加したということは現金を払って商品、製品、原材料等を購入して
在庫として固定化されているということなのでそれだけで資金は不足します。
Dその他流動資産の増加
 中小企業では、仮払金、前払金、立替金、貸付金などで使い道がはっきり
しなかったり、経営者が個人的に使ったものを抱えていることがあります。
これらその他流動資産が増加すると資金は不足します。
Eその他流動負債の減少
 預り金や前受金が減少するとそれだけ現金が流出したことになるので
資金は不足します。

○具体的な資金繰り改善方法
@ 売上債権を減らす
売上債権とは、売上代金を期日に受け取るという約束にもとづく権利のこと
ですから、当然、期日までのあいだは、お金にならないので売上債権が多いと
資金繰りは苦しくなり、売上債権が少ないほど資金繰りは楽になります。
そこで、この売上債権を資金繰りの観点から考える場合に大事なことは、
売上から代金回収までの期間、つまり「回収サイト」と呼びますが、その回収
サイトが長くなれば、それだけの間、お金が入ってこないので資金が苦しく
なります。

 例えば、月商300万円の取引をしている得意先の回収サイトが3ヶ月であれば
300万円の3ヶ月で、常に900万円の売上債権を持っており、3ヶ月間お金が
入ってこない状態となります。もしも、この得意先の回収サイトが1ヶ月だった
とすれば、300万円の売上債権となって資金は600万円もの差がつくことになります。
 つまり、売上債権が多くなるのは、回収サイトが長いことが原因となるわけです。
 現実問題として、回収サイトを短くするのは、なかなか難しいかもしれません
が、もし可能性があれば、得意先に交渉する価値はあると思います。
 売上債権が増えるもう一つの原因としては、「不良資産」の存在があります。
不良債権とは、相手先の業績不振や資金不足によって、当初約束された
期日に代金の決済が行われなかった債権のことです。

 不良資産の対策としては、@得意先の経営状態に注意しA手形取引に切り
替える。
 これは、手形は「裏書」や「割引」という換金手段があり、期日前に資金化する
という面や手形取引は、相手にとってプレッシャーを与えることができるので
手形のほうが便利なのです。また、B売上債権の上限額を決めておいて売上
債権の残高がその金額を超えないようにする方法「与信管理」も有効であり、
当分の間、現金取引に変更するか、場合によっては、取引を中止することも
必要なのです。

A 仕入債務の増加
 「増加」とは、少し乱暴な言い方だったかもしれませんが、仕入債務(買掛金と
支払手形)は支払いを先延ばししている状況ですから、仕入債務が多いほど
資金繰りは楽になるということです。そして、売上債権の場合と同じように仕入
債務の残高は支払期日までの期間の長さ、つまり、「支払サイト」によって決まります。
当然、回収サイトは短いほどよかったですが、支払サイトは長いほどよいという
ことになります。回収サイトとのバランスに注意しながら支払サイトを上手に
決めるのがポイントとなります。
 支払サイトのほうが回収サイトよりも短かければ常に入金よりも、出金のほうが
先行するからかなり資金繰りが大変なことになります。慢性的な資金不足に
陥っている会社の多くがこの症状に悩んでいます。

 ここで、簡単な回収サイトと支払サイトを全体的に見極める方法を紹介します。
 「回転期間分析」という方法です。
 売上債権を月商で割ったものを「売上債権回転期間」といいますが、これは
売上債権が何か月分の売上高に匹敵するかということを表している数値になります。
同様に、仕入債務を月商で割れば、「仕入債務回転期間」というのが計算できます。
 この回転期間を比べて売上債権回転期間のほうが大きければそれだけ
回収サイトが長すぎることになりますから改善が必要になります。

     売上債権回転期間=売上債権÷月商
     ※売上債権=売掛金+受取手形  月商=年間売上高÷12ヶ月
     仕入債務回転期間=仕入債務÷月商
     ※仕入債務=買掛金+支払手形  月商=年間売上高÷12ヶ月

 大まかに調べて、経営改善の目安にするのであればこの方法は便利ですが、
具体的なサイトの改善を行おうとすれば、やはり得意先や支払先ごとの交渉に
なるので個別に見ていく必要が生じます。
 しかし、きちんと約束どおり支払ってくれる得意先に、もっと早く支払って
下さいとは言えないし、同じように納期や品質に問題のない仕入先に対しても
無理な注文はつけられないと思います。やはり、支払いが遅れ気味の得意先
や納期遅れなどの問題のある仕入先に対してサイトの変更を依頼するのが
正攻法になるかと思います。

B 経費の削減
 売上げを簡単には伸ばせない状況で、利益を出すには経費削減は必要
不可欠になっています。
 とはいっても、すでにどの企業でも経費削減をそれなりに実施していること
だと思います。
また、会社を維持したり、事業を成長させていくためには経費は必要で、やたらと
削減すればいいというわけではありません。
 さらに、経費削減は、一見簡単そうに見えて、実はなかなか実行にうつしにくい
という面があります。無理な削減をしようとすると、社内で反対が出たり、不満が
出たりもします。
 しかし、厳しい経済環境のもとで会社を維持したり、事業を成長させていくため
には資金繰り改善という観点から、もう一度、経費削減を見直さなければなりません。

 実は、簡単にできる経費削減があるのに単に知らなかったために余計な
経費がかかっていることもあります。また、経費削減ができることはわかって
いても、その効果が小さいために面倒だからやらないでいるというケースも
少なくありません。
 現在のように、低成長の経済状況下では、売上を伸ばすことが簡単では
ない難しい状況にあります。だからこそ、このような時代に利益を出すには、
経費の削減が不可欠となっています。

 アライアランスとアウトソーシングの活用も経費削減の手法の一つです。
 経営のスピードを上げて目標を達成するためには、自社の中核となる強みに
経営資源を集中させ、自社にない経営資源は外部と提携関係を構築(アライア
ランス)、これまで社内で行っていた業務を外部委託(アウトソーシング)する
ことで補う方法です。
 うまく活用すれば、会社が躍進するためのきっかけにもなります。大競争
時代を勝ち抜くためには、企業が自社の強みであり核となる部門や事業に
特化し、そこに人材や資金などのあらゆる経営資源を集中していかなければ
なりません。
 そのためにも、アライアランスやアウトソーシングをうまく活用する必要が
あるのです。

C 在庫の削減
 サービス業など業種によっては在庫が問題になることはありませんが、
期日の在庫がいくら増加しても売上原価は同じであれば、損益計算上の
利益には影響はありません。
 しかし、在庫が増えたということはそれだけ仕入があったということです。
仕入を行えばその代金を支払ったのですから、当然資金繰りは悪化します。
つまり在庫は少ないほど資金繰りを助けるものです。

 ここで、在庫が思うように減らせないときには、その原因、例えば不人気
商品の仕入なのか、大量仕入による過剰在庫なのか、売りさばくのに時間が
かかりすぎて商品そのものが劣化して売り物にならなくなってしまったのかを
調査してみることが大事です。
 ただし、ある程度の店構えとするための商品在庫は、一定水準を維持しな
ければならないので、こういう在庫に投下された資金は、販売によって直接
回収するよりは、商売によって得られる全体の利益によって回収しなければ
なりません。

 そうすると、在庫を減らすという単純な考え方ではなく、「在庫が異常に増え
すぎる」「売れ行きの悪い商品がいつまでも店先を占拠して利益に貢献しない」
といったことが起こらないように注意を払っておくことが、資金繰り改善では
重要になってきます。

D・E その他流動資産・その他流動負債(雑勘定)の見直し
 特にその他流動資産のほうでは、使い道のはっきりしない仮払金、前払金、
立替金、貸付金などがあると、結局そこに資金がねむってしまっていることに
なるので、早急に精算する必要があります。
 使い道がはっきりしないお金は、経営者の公私混同から生じることが多いようです。
 経営者が個人的に使った遊興費や飲食代を仮払金とか立替金で処理し、
それが何年も精算されないで毎年増えていきます。
 さらに悪いことに、経営者が個人的に使った仮払金などが役員賞与と認定
されて、余計な税金まで取られることもあります。

 こんなことでは、資金繰りが悪くなるだけではなく、会社の経営基盤そのものが
崩壊してしまいます。経営者が個人的に使う費用は、経営者の報酬から出す
という当たり前のことができないで、企業経営ができるはずがありません。
 経営者の個人的な仮払金、立替金、貸付金等で、経営者が負担すべきものや
経営者が回収すべきものは、きっちりと回収しなければなりません。

F 助成金・補助金・給付金(以下助成金等)の活用
 助成金等とは、国の制度によるものなので、支給を受けるためには、雇用
保険に加入している等の要件がありますが、返済する必要のないお金なので、
資金繰り改善のためには大きなメリットとなります。
 助成金等は、ほとんど宣伝されていませんので意外と知られていません。
特徴としては、予算の枠が決まっていたり、支給の時期が限定されていたり
するため、いつの間にかなくなってしまうところにあります。つまり、知っている者
勝ち、早い者勝ちの制度なのです。

 このためには、インターネットなどを利用してマメに情報を収集したりするのが
いいと思いますが、申請の手続きはかなり面倒で、審査が厳しく、しっかりした
書類ができていないと審査に通りません。やはり、専門のコンサルタント(社会
保険労務士)などに相談したほうが手っ取り早いと思います。
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資金繰り表
○資金繰りの構造
 資金繰り表は、法律でその作成が義務付けられているわけではありません。
銀行には提出を要求されることはありますが、それは基本的に任意に求め
られるもので、本来はあくまでも会社内部で資金を管理するために作成する
ものです。
 そのため資金繰り表には、損益計算書や貸借対照表のように定められた
様式があるわけではありません。自分の会社にあった様式で使いやすく
作成すればそれで十分です。
とはいっても、基本的なスタイルがあります。資金繰り表に記載される項目は、
おおまかにいえば、次の4つになります。
@ 前月繰越
 前月から繰り越された資金の残高が記入されます。この場合の資金とは、
現金のほかに当座預金や普通預金といった預金も含まれます。
A 収入
 入金額を記入します。使い勝手をよくするために、入金の内容が明らかに
なるように詳細科目を設定しますが、あまり細かく科目を設定するとかえって
使いにくくなってしまいますので、あくまでもシンプルにまとめたほうがいいです。
B 支出
 出金額を記入します。収入と同様にシンプルに科目設定しておけば、
使いやすいものができます。
C 翌月繰越
 前月繰越の資金残高に収入を加え、支出を引けば、その時点における
資金残高が計算できます。
 以上、4つの項目は、最低限度必要になりますが、絶対これでなければいけない
という決まった書式はありませんが、普段からこれを利用しようと思えば、使い
やすいに越したことはありません。
 そうすると、T資金の流れがひと目でわかり、U予定を立てやすく、V煩雑でない、
といったことに留意することが大切で、とくに、収入と支出の科目設定がポイント
となります。

 さらに、表の書式を次のように発展させることもあります。
□1 財務収支を分離する
 実際の資金繰りでは将来の支払のための資金準備を確認し、資金が足りない
ようであれば、借入などによって資金調達を行うという一連の流れになります。
このような、資金繰りの手続きを忠実に踏まえるならば、資金繰りの収支のうち、
資金調達による収入を他の収入から分離するとともに、その返済を他の支出と
分離して「財務収支」という分類を設けておくと見やすくなります。こうしておけば、
財務活動を除いた、会社の事業そのものの収支が明らかになります。
 これは、固定資産の購入や売却があまりない会社に向いており、一般的な中小
企業では、このタイプの資金繰り表を使っています。

□2 経常収支と設備収支と財務収支とを区別する
 さらに発展した資金繰り表では、資金の収支を経常収支、設備収支、財務収支の
3部からなる収支に区分したものです。経常収支は、売上や売掛金回収などの現金
収入と仕入や買掛金支払などの現金支出からなります。設備収支は、固定資産を
売却したときの収入と、設備投資や固定資産を購入したときの支出からなります。
財務収支は、借入れなどの収入と借入金等の毎月の返済支出からなります。

 このタイプの特徴は、資金収支を発生原因別に区分して示しているので、資金
過不足の原因がすぐにわかることです。固定資産の購入と売却がたびたびある
会社では、このタイプの資金繰り表を作る必要があります。

資金繰り表の作成
○実績資金繰り表の作成
 資金繰り表には、過去の実績から作る「実績資金繰り表」と、将来の予想と計画を
示す「予定資金繰り表」があります。資金繰りで大切なことは、資金の不足がない
ようにお金のやりくりをすることです。
 したがって、より重要なのは予定資金繰り表になります。資金繰り表といえば、
通常は、この予定資金繰り表のことをいいますが、実績資金繰り表と予定資金
繰り表が別々に作成されるのはまれで、実績資金繰り表と予定資金繰り表は
続いて表されます。

 まずは実績資金繰り表ですが、対象期間の実際の収入と支出の結果を項目ごとに
分類集計し、それらを各科目に記入すればよいので、難しいことは特にありません。
 ところが、取引量の多い会社ともなると、実際の収入、支出を分類集計することは大変です。
資金繰り表は、資金繰りを管理するための資料ですから、作成に手間がかかりすぎ、
時機を逃してしまっては、本当の意味の資金繰りができないおそれがあります。

 そこで、実績資金繰り表は、簡単に作成する工夫が大切になってきます。
 実績資金繰り表を楽にして作る方法のひとつは、現金や預金の出納帳を利用する
ものです。
資金繰り表でいう資金とは、現金や預金を指していたわけです
から、これらの資金に関する直接の記録を利用するというのは、うまいやり方で
あるといえます。
 ただし、この方法も、作業がやりやすいという利点はあるものの、取引量が増えた
ときの分類集計の手間はあまり変わりません。そこで、資金繰り表を作成することを
念頭に、現金出納帳や預金出納帳のほうに工夫を施しておくと便利です。
 その工夫とは、現金や預金の出納帳に資金繰り表の科目ごとの集計欄をあらかじめ
設けておくというものです。
 あらかじめ、現金や預金の出納帳を上記のようにしておけば、取引のたびに分類が
行われますので、科目ごとの集計さえ行えば、あっという間に、実績資金繰り表を
作成することができます。

○予定資金繰り表の作成
 予定資金繰り表は事業計画をもとに、通常月単位で、6ヶ月から1年先の分まで
作成します。
数ヶ月先の資金繰りの状況を予測して、資金不足が起こるときに、それにどう対処する
か、どうやって資金を調達するかを計画しておくことが重要です。予定資金繰り表は
1ヶ月が過ぎたら、新たに1ヶ月分を作るようにして、毎月新しいものを作っていきます。
 それでは、財務収支を分離する資金繰り表にそって、予定資金繰り表の作り方を
説明します。
 まず、前月繰越金のところには、月初の現金預金残高合計を記入します。
 前月繰越金にその月の入金額を加えて支出額を差し引けば、翌月繰越金を計算
することができます。
 収入と支出は、将来の収入金額、支出金額を見積もって記入する、なんとなく
曖昧な方法で作成することになりますが、経営活動による収入と支出、および
財務活動による収入と支出に分けます。

 経営活動による収入は、現金売上げ、売掛金の回収、受取手形の期日入金および、
その他の入金に分けることができます。入金の予定額を予想するには、得意先ごとに
取引形態や回収条件が異なる場合には、それぞれに売上予想を行っていくことになります。

 経営活動による支出は、現金仕入れ、買掛金の支払、支払手形の決済、人件費
支払、支払利息、その他の支払に分けることができます。仕入代金の支払いとなる
現金仕入、買掛金支払、支払手形決済の予想はそれほど難しくはありません。
人件費やその他支払も毎月だいたい一定しています。

 資金計画の段階では翌月繰越金がプラスになっている必要があります。
 ここで重要なことは、予定資金繰り表は、あくまで予定にすぎず、会社の資金は
予定通り動いてくれませんので、先にも述べた実績資金繰り表を作成し、資金繰りの
予定と実績に、なぜ差が生じたのか、その原因を調査しなければなりません。実際の
企業活動が予定通りにいかなかったために差が生じることもあります。例えば、
売掛金が予定通り回収できなかったとか、諸経費が予定以上にかかりすぎたという
場合です。この場合にも、その原因を調査して適切なフォローアップをする必要があります。

 通常は、予定よりも資金が不足する場合が多く、不足額が大きいと慌てて資金調達に
走らなければなりません。時には、資金が予定よりも余ることもありますが、もちろん
余るということは結構なことですが、この場合には、余分な手形割引や借入れをして、
無駄な金利を支払っていたことになります。資金繰り計画の評価を繰り返し行うことに
よって、より精度の高い計画を立てるようにする必要があります。


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